異性のふとしたギャップは、何故心を惑わせるのだろう。
その日はとある駅で待ち合わせのために向かっていた。
目的地は快速電車から各駅停車の普通電車に乗り換えないといけない。
知らない駅での電車の乗り換えは不安でいっぱいになる。
乗換案内のアプリを何度も確認するし、緊張から180度回転して逆にリラックスして寝てしまったらどうしよう、と到着の5分前、3分前には設定してしまう時もしばしば。
乗り換えの駅に到着する数秒前、駅の外観を見て小さな駅だと知った時には気持ちが落ち着いく。
電車は駅へとゆっくり停車していく。社内アナウンスの声で乗り換えの案内を聞いて最終確認も完了。
電車と駅のホームの間の扉を隔てて、この電車に乗ろうと駅のホームに立っていた女性が熱心に本を読んでいる。
ここで間違えてはいけないからとにかく早く乗り換えたい、という焦る気持ちで歩く速度も少し早くなった。
けど、かわいい女性が熱心に読む本ってどんなの本なのだろうか?とふと気になった。
ちらっと横目に表紙を見たら漫画「ROOKIES」を読んでた。
思わず二度見した。
間違いなくあのドラマ化もされた野球漫画の「ROOKIES」だ。
なんともいえない光景が非常に印象に残った。
乗り換えた電車の中で座席にすぐ座って、なぜあんなかわいい子が野球漫画を読んでいたのかを考えた。
・大学の友人にオススメされて借りている最中。
・彼氏が漫画の趣味で話を合わせてより仲良くなるために勉強しているから。
・単純に好きなジャンルで読んでいる。
なんかどれもピンとこない。いや、もしかしたら幻覚を見たのではないだろうか。
多分あの女性には二度と会うこともないから正解を見つけることができない。
なのにどうでもいいことに思い更けていたら自分の目的地である駅を乗り越していた。
戻るにも田舎で、電車の本数がなくて遅刻が確定した瞬間だった。
もうこのまま目的地に行かずに家に帰りたい。帰らせてくれ。
この先もアンバランスな魅力に惹かれていたらまた痛い目を遭うのだろうなって思った。
そんな悠長な考え事してる場合じゃないのにあの姿を思い出して、LINEでの謝罪のメッセージが浮かばないまま、また一駅通過した。